初恋の人

おれの初恋

そう言われてすぐに思い浮かぶのは彼女だろう。

昨夜、もう会わないし連絡も取らないことを決めて、さよならをした。

 

今年の1月に再会をして、もう半年以上経っていた。地元の奴らの前でおれに告白してきた彼女。相変わらずメチャクチャだと思ったし、また惹かれた。

それからラインをブロックしたり解除したりなどあり、新潟で2回、東京で1回2人で会った。毎回緊張してお互いうまく話せないけど、楽しかった。一線を越えなかったのは彼女がいるからじゃない。あの子に嫌われたくなかったからだろう。

 

5月に東京で会って以来、今月26日に地元で会った。北海道土産を渡して、おれの運転でイタリアンを食べに行った。彼女は少し酔って、セブンでキノコの山とジャガビーハイボールを買って、親水公園に行った。特に何をするわけでもなく、黙っては話し、また黙った。向こうがおれのTシャツの柄を触ってきた。少し反応してしまった。あとで考えればキスはしなくてもハグくらいはすればよかったかなと少し後悔した。でもしなくてよかったと思う。今日で会うのは最後にしなきゃと思っていたけど、その時は言えなかった。彼女は帰りたくなさそうにしていたけど、きりがないので、日付が変わる前に家に送った。道中、「わたしがしてもそっちは返してくれないじゃん」と少し拗ねていた。なんて儚い夜だったろう。

 

それから3日後おれは面倒な研修があるから仮病で休んだ。彼女からLINEで「本当は結婚してほしくない」ときたが、返事が詰まって返せなかった。前の夜から話がしたそうだったが、この日の夜も23時頃電話がしたいと言ってきたから、おれは先に寝ていた彼女に気づかれないように外に出て電話をした。

 

「もしもし」その声で、ああ好きだなと思う。おれは、この前会った時よりも顔が見えない分少し流暢に話す。後で分かったことだけど、彼女は「もう会わないほうがいい」と言いたかったらしいけど、まるで別方向の話になった。「私とどうして会うのか」「どうしたいのか」を聞かれた。言葉が詰まる。相手を傷つけないように、でも自分を守るような建前にならないように、正直に話した。

 

電波のせいで一度電話が切れて、また掛けた。

 

東京で会った時ホテルに行こうと思ったか。わたしとエッチできるか。わたしは恥ずかしくて脱げない。とかそんな話をしだした。ずっと聞きたかったらしい。たくやは付き合ったらどうなるのかと聞かれて、思い浮かんでいたけどはぐらかした。おれは昔から、メールがキモくて振られた高1のときから、彼女に嫌われることが恐ろしくて仕方ない。だから、口数も少ないし、表面的な感じになってしまうんだと再確認した。そのあと、なかなか電話は終わらず、向こうは自分にはどういう男がいいのか聞いてきたり、昔の男とどうだったかや修羅場の話をしてきたりした。おれと付き合えたらいい、無理しないでいれるということは伝わった。結局、「もう会わないこと」「この電話が終わったらおれからラインをブロックすること」を決めた。彼女はおれに「お幸せに」と言った。おれは「元気に健康でいて」と言った。ごめんけど他の男との幸せはまだ願えない。きっと一生。

 

電話を切った。1時間以上電話したか。ブロックする前に、酒男薬に溺れないでくれってことと、自分をいちばん大切にしてくれと送った。甚だおせっかいだ。それから意を決してブロックした。向こうの望み通りトークも削除した。そのあと、弄んだ形になったことを謝ればよかったと思った。

 

まあこんな感じである。とりあえず吐き出してみた。おれはおれの人生を歩まなければならない。まったく新学期準備も終わってないのにおれは教室で何をしているんだか。